平山栄一記録簿  想哲理越憂愁     

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「女性国際戦犯法廷の全記録 1」ある検事の発信記録

私自身の記録として、この鄭南用検事の発信記録も書き起こしで残しておきます。私が、なぜ「従軍慰安婦」の問題について考えるのかというと、簡単に言えば、日本政府がずっとウソを吐き続けており、さらに元「従軍慰安婦」に対する尊重と真剣な謝罪、法的責任を全く果たさないがためです。それをしない限り、日本は、世界からこの問題に関して尊敬を得られることが無いと思っています。

 

未だに、元「従軍慰安婦」への罵倒や誹謗中傷、などが右翼団体を中心に、声高に叫ばれます。若い人たちも殆ど正確に教えられたことがなく、相変わらず、同様に心冷たい発信が為されたりします。実に残念なことです。ドイツでのホロコーストについては、ドイツは徹底的に実際の記録を検証し、すべてできる限り正確な情報を出しています。ホロコーストを否定する人は罰せられます。日本では罰せられるどころか、政府自身がそうした罵倒を黙認する状況です。日本政府にとって、日本人にとって、これは逆に非常に危険なことだと私は思っています。

 

と言っても、現状は中々日本では厳しい状況は変わりません。まずは記録し、ご覧になれる方には、是非ご覧になっていただきたいと思います。

 

内容の半分くらいから、拍手する場面がかなりありました。たくさんの人たちが同じ思いを持っておられたように感じます。以下、書き起こしです。

 

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鄭南用検事

 

 尊敬する判事の皆さん。私は朝鮮民主主義人民共和国検事の鄭南用です。{中略}

 それでは、国家責任について述べます。

 

「ビデオ証言」

 

○私の前で恨みをはらさずには目をつぶれません。やつらが私を不具者にしたのです。わたしはちゃんと口がきけません。・・・・・怒りで震えます。

○腹が立って、ほんとうに身の毛がよだつ・・・・・。

 奴らは朝鮮女性の前で、私の前に来て、許しを請わねばなりません。そして補償もしなければなりません(金福童)。

○奴らは朝鮮人の前に来てかならず謝罪し、膝を屈してあやまらなければならない(金英淑)。

○・・・・・骨が折れて、誰のせいで・・・・・、手が使えなくなって、・・・・・。

○奴らを何度でも処断してこそ私は目をつむることができます。その前には死ねません。

○私たち20万の「慰安婦」たちに何の罪があるっていうのか。・・・・・刀で殺し、・・・・・広場に引きずり出して殺し、・・・・・。大きな罪だ。花のような青春を奪って、人生だめにして・・・・・。朝鮮にきて女性を皆・・・・・。補償金は国が払わなければなりません。国からもらわなければなりません。

 {韓国側被害者席から拍手}

 

鄭検事:

 

 私たちはただいま被害者たちの悲嘆な絶叫と要求を聞きました。しかし、日本政府はこれが道徳的には不憫なことだと言って謝ると言いますが、法的責任がないのか。そんなことはありません。日本政府は全面的に法的責任を負わねばなりません。

 それでは日本政府の法的責任に関する一般要件は何か。一つは「法廷」憲章四条規定によって日本政府は性奴隷制度に対する責任を負わなければならないということです。もう一つは、国家責任に関する一般要件によって、日本政府は軍性奴隷制度に対して責任を負わなければならないということです。その一般要件とはいくつかに分けられますが、次の三つの点に絞って申しあげることができます。 

 一つには、国家は自らが犯した不法行為について責任を負わなければならないということです。ここでいう国家自らとは、国家を構成する機関と国家公務員が公的な事柄において犯した不法行為を念頭においています。

 次には、一般の人でも法に携わる人でも個人的な目的のために行ったのではなく、国家の指示や国家の利益のための行為である場合、個人が行った行為でも国家が責任を負わなければなりません。

 最後には、国家は個人が自身の利益のために行った行為でも、それが不法行為であることを知っていながらその防止策をとらなかったとか、後に被害を回復するための措置をとらなかった場合、国家はそれに対する全的な責任を負わなければならないのです。

 これが、法律上の作為と不作為の論理です。

 このような論拠に照らしてみた場合、軍性奴隷制度は日本国が直接謀議、計画、実行したのであり、派遣部隊が直接これに関与しました。

 また、日本政府は職業紹介所など法人団体や個人を通じて、多くの女性を連行していったし、業者たちを慰安所管理者にして慰安所の管理をさせました。

 日本政府は、個人や売春業者たちが一定の私娼や公娼で不正行為をするのを知っていたにもかかわらず、それに対する防止的措置をとらなかったばかりか、それを助長させて日本軍の性的奉仕をさせました。

 こうしたことから日本政府は自らが犯した行為、法人、個人をさせて行った行為、または民間業者を利用した事実に対し、日本政府は責任を負わなければなりません。

 それでは、日本政府がこうした行為を行ったという具体的な事例があるのか。そうした事例はいくらでもありますし、それは付録として添付して判事の皆さんと検事団に提出しました。時間の関係上そうした事例については言及しません。

 次に、日本軍性奴隷制度の犯罪性に対する具体的な法的根拠について申し上げます。

 日本軍性奴隷制度は1907年ハーグ陸戦条約附帯規則第46条に反する不法行為です。

 二つ目は日本軍性奴隷制が1910年に締結された「醜業を行わしむる為の婦女及び児童の売買禁止に関する国際条約」と1921年「婦女及び児童の売買禁止に関する国際条約」に違反する行為であります。この二つの条約には日本は1925年に加入しており、正式な拘束力をもちます。

 また日本軍性奴隷制は1946年に制定された極東国際軍事裁判所条例(以下、東京裁判条例)第六条三項に抵触する行為です。この東京裁判条例は日本が1951年サンフランシスコ平和条約の時に正式受諾するという通告をだしたものです。したがってこの東京裁判の結果は日本に拘束力をもちます。

 四つ目は、日本軍性奴隷制は奴隷制度、奴隷貿易を禁止する国際慣習法に抵触する行為です。日本は1926年度に採択された奴隷条約に加入しませんでした。しかし奴隷問題は基本人権条約として慣習法に属し、「ユス・コーゲンス」(強行規範)に属します。「ユス・コーゲンス」はどの国が加入したかどうかに関係無く拘束力をもちます。したがって日本はこの法規の拘束を受けます。

 最後に日本は1930年ILO29号条約「強制労働条約」に抵触します。この条約では強制労働を基本的に撤廃することを要求していますが、当時の状況においては18歳以上、45歳未満の健康な男子だけに強制労働ができるとしました。その他の強制労働を強いた者には厳重に処罰すると規定しました。

 お聞きの皆さんがおわかりのように、日本軍性奴隷制は健康な男子ではなく女性を対象にしました。それも条約に規定された18歳未満の幼い少女たちです。したがってILO条約に全面的に違反すると判断します。

 また、日本軍性奴隷制は「法廷」憲章第二条一項と二項に抵触する行為であると考えます。このような法的根拠に照らし、日本軍性奴隷制は全面的に人道に対する罪に該当し、戦争犯罪にあたる罪であると、この法廷で厳粛に結論づけられます。

 それでは現日本政府は、旧日本国の継承政権としてこの国家責任についてどのように履行しなければならないのか。要求事項について何点か述べさせていただきます。

 まず、日本政府は軍性奴隷制に関する真相を徹底的に調査し、全貌を公開しなければなりません。さきに申し上げたように、「慰安婦」の総数、国別人数、慰安所設置地域と慰安所の名称、その管理者、「慰安婦」の対応状況を含めて公開しなければならないと主張します。

 次に、日本政府は軍性奴隷制に対する法的責任を認め、すべての被害者に対して正式な謝罪をしなければなりません。この謝罪はただの言葉だけではなく、十分な賠償をともなう謝罪でなければなりませんし、また、ある招請された人物が適当な機会に一言二言ことばで述べるだけの謝罪ではなく、国会決議や政府声明、あるいは条約のような文書のかたちで記録され公にされなければなりません。

 三つ目には、日本政府は性奴隷制に対する十分な国家賠償をしなければなりません。周知のように加害者が被害者に補償するのは一般的原理であり国際法上の要求であります。日本は加害国として被害者にかならず補償しなければなりません。この補償は民間基金のような民間団体が募集したお金ではなく、国庫金で、国家の名で被害者に対する賠償がなされなければならないと、私は主張するものであります。{場内拍手}

 またこの補償は生存被害女性のみならず、すでに死亡した被害者の遺族にも正式に支給されなければならないと主張します。

 四つ目に、日本政府は軍「慰安婦」生活を強要された被害女性たちの尊厳を再び損なうような行為を徹底的に根絶するための措置を講じなければなりません。現在日本の一部の右翼勢力は、軍「慰安婦」たちを、「売春婦」だとか金儲けのために性行為をしたと言って、彼女たちの大切な尊厳と名誉を再び損なう妄言を吐いています。日本政府はこれらを黙認しており、なんら真剣な態度で真剣に深く検討し、日本で、日本の右翼勢力から、こうした発言が出ないように実践的で実質的防止措置を講じなければなりません。{場内拍手}

 五つ目に日本政府は、世界各地をすべて調査し、犠牲になったすべての被害者の遺骨を彼女たちの故郷や彼女たちの親族が住んでいる土地に、丁重に葬るべきです。また今日の証言で明らかになったように、河床淑ハルモニをはじめとする被害者たちが、未だに中国、日本、カンボジア、南部サハリンなどで暮らしています。日本政府は彼女たちの要求を聞き帰国させるか、あるいは祖国訪問を実現するための措置を講じなければなりません。

 六つ目に日本政府は、軍性奴隷制を謀議、計画、実現、執行した者に対して刑事処罰を加えなければなりません。ここで、生存者たちには正式な法廷に出頭させ該当する処罰をし、あるいは特別法廷をつくって処罰するように国内での措置が講じられなければなりません。死亡した者たちに対しては、死んでしまったが、彼らに対しても本法廷の名前で刑事処罰を加えることによって、あらゆる人々に罪を犯せば生きていても死んでしまっても、必ず刑罰を受けるという歴史の教訓を残すようにしなければなりません。{場内拍手}

 最後に、日本政府は歴史教科書改悪策動や他のさまざまな策動によって、過去の軍「慰安婦」生活に関する問題を歴史の陰に隠してしまおうという策略を行っており、また、それを歪曲したり否定したりして、今後も伝えられないようにしています。日本政府はこれらに対して深く反省し、教科書をはじめとするあらゆる書籍に事実をそのまま記述し、社会教育と学校教育を通して、日本人がこうした過去についてよく知るようにしなければなりません。日本政府は博物館や文書保管所のような記録保管所をつくり、当時の資料、被害状況の証言などすべての記録を保管し、だれもが閲覧できるようにし、日本の過去の罪が二度と日本というこの土地から起こらないよう、十分な注意を払わなければなりません。

 私は北と南の共同検事団の一員として、以上の責任履行を本法廷の名において日本政府に強く促すことを要求します。

 

チンキン判事: 

 

 ありがとうございます。ひとつ質問があります。さきほどいろいろと条約について言及されましたが、ハーグ条約に日本が加入したとおっしゃいましたか? 

 日本は1926年の条約に調印しなかったが、一般的な国際慣行規範であるとした理由について詳しく述べてください。

 

鄭検事:

 

 日本はハーグ条約を批准しております。また、ILO条約は1930年の強制労働条約です。日本は1932年に正式加入しましたので、拘束力をもつといえます。つぎに奴隷条約の問題です。日本は1926年の条約に正式加入しませんでした。したがって条約上において正式加入していない国に対して拘束力をもたせるのは無理があると思います。しかし、奴隷条約は人権法と人道法として、ユス・コーゲンスに該当すると世界が認めていることです。また、慣習規範になっています。したがって日本を1926年の条約に照らして提訴するより、ユス・コーゲンスに照らしてみるほうが効果的です。そうでなくても自分たちを拘束する法規が第二次世界大戦前にはなかったと反論しています。こうした点から奴隷制問題は慣習規範として日本を提訴したほうがよいと提起しました。

 

チンキン判事:

 

 被害女性の数に関する質問です。南で198人、北で218人という人数は本人が自ら「慰安婦」だったと認めた人の数ですか。なぜこうした質問をするかというと、まだ自分が「慰安婦」だと名乗り出ていない被害者がいるのではないかということです。

 また、カンボジアや中国にも健在の被害者がいると言いましたが、その数は先ほどの被害者数に含まれていますか。含まれないとするとその数は把握できていますか。

 

鄭検事:

 

 さきほど、分かっている被害者の数が218名で、証言に立つようになったのが43名と申し上げましたが、これは北だけの被害者の数です。その他の地域の被害者の数はまだ正確に把握できていません。これから調査して把握しようと思います。

 

マクドナルド判事:

 

 ほかの検事で付け加えたいことはありますか。

 

姜検事:

 

 海外のハルモニの数を正確に把握できませんが、私たちが探し出した人数は、先ほどの「中国に連行された朝鮮人軍慰安婦たち」という本の中の数字やそのほか、旧「満州」地域など含めて、約40人近くだと思います。その中で亡くなった方もいます。またこれからも発見されると思います。

 

 

朴検事:

 

 私も付け加えさせていただきたいと思います。「慰安婦」の女性たちは自らすすんで「慰安婦」であったことを認めるということは、儒教的社会において大変難しいことだということを覚えておいていただきたいと思います。そのため被害者の総数にくらべ名乗り出た人数が思ったより少数であるということを念頭においていただきたいと思います。

 またカンボジアにいた被害者ですが、その被害者は記憶をほとんど失っていました。なぜなら強制的に10代のときにカンボジアに連れていかれ、あまりに多くの苦痛を体験し、精神的被害が大きかったからです。進んで自分の記憶を喪失した人もいますし、自分がどこからきたのかさえ忘れてしまったという人もいて、正確な数字を把握するのが難しいという状況もあります。

 これで私たちの発表を終え、最後までご静聴くださいました判事の皆さん、会場の皆さんに感謝します。

 

マクドナルド判事:

 

 資料、パワーポイントの資料などもあとで提出してください。とてもすばらしい体系的なプレゼンテーションでした。感謝します。

                  {呉文淑、金 栄・訳}