平山栄一記録簿  想哲理越憂愁     

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③桜桃

太宰治の絶筆、桜桃を読みました。この作品、読んでませんでした。というより、この小品集そのものを読んでませんでした。新潮文庫にまとめられている、太宰治晩年の作品集。いずれも、ギリギリ苦しみの発露がしたたり落ちるようなものばかり。

 

桜桃を読むと、もうこの人、生きていく術は無いのだろうな、いや、もう生き続ける気持ちも無いのだろうな、としか思えません。

 

苦しいことばかり山積みになるのが人生、そうとでも断言したい、そう思わない方が不思議。何だか見ているだけで心が切り刻まれる、そういう思いが読者の心に溢れてしまいます。

 

この人の作品には明るいものもけっこうあります。人間って、一面的なものじゃない。悲惨な面にも幸福な面にも人間は顔を向けることがあり、たまたま晩年において、太宰治は悲惨な面ばかりに向いていたようです。むろん健康も蝕まれてました。

 

唐突ですが、人間、健康をやられると、大体、幸福な面を作ることができなくなります。強烈な意志力でもって、究極の不健康の中で平常心と幸福をものにする人もいます。太宰治はそうするにはあまりにナイーブで、そして真面目だったのでしょう。頭も良すぎました。

 

凡人であるのは幸せなことです。とりあえず凡人であり続けた私は大変幸せな人生を送ってきたな、これからも凡人として幸せを追求しよう、そう思わせてもらいました。彼の小説の明るいものをまた読んでみたいものです。

 

走れメロスは読みましたね。また探して読んでみます。