平山栄一記録簿  想哲理越憂愁     

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②永井幸寿弁護士

 

インスタグラムはよく知らないが、時間の制限があるのだろう。早口で録音されている。文字の書き起こしをしておこう。===線で区切る。

 

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(ナレーション)日本国憲法には緊急事態条項が書かれていません。これにはどのような理由があるのでしょうか。

 

(永井弁護士)もともと大日本帝国憲法の経験なんですけど、大日本帝国憲法の時は緊急事態条項が4つもあったんですね。例えば「緊急勅令」といって緊急時には議会が持っている立法権を政府が持ってしまうとかですね、緊急財政処分といって、本来、議会が持っている予算議決権を政府が持ってしまうとか、そういう制度があったんですが、これが散々濫用されたあげくに軍隊が暴走して戦争に突入してしまったそういう経験があったんですね。濫用の危険があるから緊急事態条項はあえて設けない、そして緊急事態に対しては事前に個別法=災害対策基本法とか、ああいう法律を制定しておいて対処するという考え方をとっています。

 

(ナレーション)永井弁護士は、阪神淡路大震災で自ら被災して以来、被災者を支援する法律の制定に関わってきました。そんな永井弁護士は大規模災害発生時の緊急事態条項の必要性をどう考えるのでしょうか。

 

(永井弁護士)私は阪神淡路大震災の時に事務所が全壊したんですね。それ以来27年災害に関する法律に関わっているんです。そして、現場・被災者とともにいろいろ会ったり被災者のための立法に関わってます。緊急事態条項が必要だったことなんて一度もないです。被災者にとって一番重要なのは、例えば仮設住宅に断熱材が入るのか、あるいは復興住宅に入るときに連帯保証人が必要なのかとか、そういうことなんです。条例とか法律の運用のレベルです。憲法なんて関係ないんですね。災害対策法の原則というのは準備してないことはできないということ、準備してもできない。

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永井幸寿弁護士の問いかけは重いものだ。驚くことに、永井弁護士のように緊急事態条項の危険性を説く人が殆どいない。同じ弁護士という立場にある人も、どちらかというと緊急事態条項を推奨しているような人が目立つ。これは今の政府が緊急事態条項を導入することを見越して、いわゆる勝ち馬に乗るという姿勢を取っているように見える。

 

この短い発信においても、緊急事態条項が如何に危険なものであるかは、門外漢の私でも簡単に理解できる。法律家であれば誰もが理解できるはずだが、今の社会で積極的に緊急事態条項の危険性を指摘する者はむしろ少ない。大変情けないことだ。

 

第二次大戦時、そしてその以前から、例えば、日清戦争、日露戦争、そして関東大震災での朝鮮人大虐殺、第二次大戦時、太平洋戦争などでの朝鮮人強制連行、強制労働、性奴隷制度などにおいて、この緊急事態条項が様々な形で関与していたのではないか。緊急事態条項によって政府や軍部が暴走し、かつ、様々な権力が巨大化し、多くの人々が弾圧され、被差別市民は抑圧され、甚大な被害を受け続けてきた。

 

その反省も無く、今回の憲法改正、緊急事態条項は必要だとの声の高さは、完全に演出され続けている。メディアもグルとなってしまった。既に大政翼賛体制となっているように感じる。自ら墓穴を掘る道筋を再度作り出していきたいようだ。上記の小文を読むだけでもどれほどに恐ろしい条項かが分かるが、どこまで伝わるか心許ない。

 

それでも、緊急事態条項の危険性が流布されない限り、日本の未来はとても厳しいものとなるのは確実だ。声は上げないといけない。