平山栄一記録簿  想哲理越憂愁     

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地味な一時間稽古で変身

もうひとつの課題だ。試力。シーリー。これはあまり長時間やったことがない。スワイショウなら基本40分。やるなら1時間でも2時間でもできるが、それだけ長くする意味もない。ところが、シーリーはものの10分くらい。これはどんなものだろう。

 

せめて20分くらいはやったほうがいいのか? やってみないと分からない。40分くらいやったほうがいいのか? それも分からない。

 

40分スワイショウ。40分正座合掌は理想だが、スワイショウはできても正座合掌があまり出来ない。いつも決意を固めるのだが、中々取り組めないものだ。16年、いや18年ほど前だったか、30分スワイショウ、30分正座合掌を半年間、達人の友人に奨められてやったことがある。これは本当に衝撃的な実験だった。

 

その頃、推手でどうしても敵わない相手が2人いた。私よりかなり若い2人だ。おまけに体格がゴツイ。110キロと100キロ。むろん2人とも結構体が引き締まってる。その上、そこでの稽古歴も私より上。いくらがんばっても、上から押しつぶされるような形で圧倒される。いくらでも動かされ、押され、横に振られ、どうすることもできない。

 

達人の友人は、半年くらい、30分ずつ、スワイショウと正座合掌をやればいい。かなり変わると思うよ、と普通に言う。とても信じられなかったが、もう騙されたと思ってやってみることにした。実はこの友人、どう見ても従来稽古のような、シヌホド腹筋、シヌホド突き蹴り、シヌホドダンベルトレーニング、シヌホドシミュレーション稽古のキッツイの、とか丸でやってない。でもバケモノのように強い。意味不明の強さがあった。何やってんのと聞くと、手〜振ってるかな、それと坐るとか、と言う。スワイショウと正座合掌のことだった。

 

で、本当に騙されたと思って半年間これに取り組んでみた。と言っても一日一時間だからそれほど大したことない。空手の稽古する人でも、一日2時間とか3時間とか普通にする。人によっては、毎日でもないだろうが、5時間とか8時間とかする人の話も聞いたりする。私はとてもそこまでできないけれど。そうそう、最近は短い稽古で効果をあげる、というのに凝っているし。

 

ともあれ、半年間、30分ずつ、スワイショウと正座合掌をやってみた。その間、ほとんどその稽古場には行かなかった。達人の友人の道場で稽古していたから問題はなかった。で、半年後、久しぶりにその稽古場に行くことになる。

 

推手の稽古を順番に代わる代わるするので、いろんな人と当たる。全くの偶然で、100キロ110キロの猛者とも当たった。ラッキー、と心の中で思った。検証ができるからだ。2人とも余裕シャクシャクで、いつものように私を押しつぶすかのような形で対峙してきた。ところがどうも様子が違う。

 

ゼンゼン圧迫感を感じない。何だコレ。普通にかわせるじゃないか、と驚いた。上にも下にも横にも普通にかわせる。押されることも全くないし押しつぶされるような感覚も全くない。それどころか、当たり前のようにこちらが先方をコントロールできる感覚がある。相手を崩し、拳や掌打を入れられるポイントもいくらでも取れる。

 

本当に驚いた。110キロの猛者の方は、あまりに私からコントロールされ、拳や掌打を入れられそうになる機会を作られまくるので腰が引けてた。むしろ私から後ずさりするような様子だった。推手が終わったとき、メッチャ怖かったス、と正直に言ってた。100キロの猛者も思うようにいかないようで、押しつぶすようにこられても、簡単に横にいなすとやっぱり簡単に動かされてた。他の推手のお相手からも、滅多に来ないのに何でこんなに強いのか、とか言われた。

 

もう充分だった。これは本当に驚くべき体験だった。たったの半年、一日たったの1時間、ユルユル稽古をしただけで(いや実は結構大変な面もあるにはあるけど)、これほど変化が出ることに驚いた。達人の友人に報告すると、ナ、言った通りやろ、とニヤリと笑ったもんだ。あったりまえやねんで、というのが伝わってきた。

 

以来、スワイショウは欠かさない。正座合掌もできるだけがんばってる。そこから敷衍して、自分なりの稽古も見つけられるようになった。

 

世の中やっぱり、武術の稽古も、体験と実験、実践、そして諦めないことだな。