「チェ・ゲバラと歩んだ人生 イルダ・ガデア著」
上記の本の中で紹介されていた詩。ゲバラもガデアも同じようにこの詩は座右の銘となっていたとのこと。なるほど・・・
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もし
もし汝のまはりの凡ての人々が狼狽し、それを汝のためなりといひて
汝を非難すれど、汝泰然自若たり得ば、
もし凡ての人々が汝を疑ふも汝自己を信頼し得ば、
されど彼等の疑ふも無理ならずとして許容し得ば。
もし汝待ち得て、而してその待つことに倦み疲れずば、
又は嘘を吐き(つき)廻られて、然も嘘を吐く者とならずば、
又は憎まれて憎みに負け人を憎む者とならずば、
されどお人好しとも見えず、聖人ぶったる口も開かずば。
もし汝夢見得てーーー然も夢を汝の主人となさずば、
もし汝思案し得てーーー然も思想を汝の目的となさずば、
もし汝勝利と災難とに遭遇し得て
然もこの二つの騙りを全く同様に取り扱ひ得ば。
もし汝汝の語りし真理の悪者によりて曲解せられ
馬鹿どもを捕ふる倭蹄(わな)とさるるを聞きて然も静かに辛抱し得ば、
又は汝が汝の生命(いのち)打ち込みたるものの破壊さるるをぢっと見守り、
それより屈みて(こごみて)使ひ減らしたる道具とりて其を建て直し得ば。
もし汝汝の得たる凡てのものを一と山に積みて
一か八かの一番に其を賭け得ば、
而して其を失ひ、再び新き蒔き直し
その損失につきてグチひとたらし溢さずば。
もし汝汝の心情(こころ)と気力と肉體力(ちから)とをその目的達成のために用ひ尽し果したる後に其を振ひ立たし得ば、
而して欺くの如くにして「頑張れ!」と叫ぶ汝の意志以外に
何ものも汝の中にあらざる時に頑張り得ば。
もし汝卑怯者と共に談じて然も汝の徳を保ち得ば、
又は王等と共に談じてーーー然も常人の気を失はずば、
もし敵も愛する友も汝を傷け能はずば、
もし汝萬人を重んじて、然も何人をも度を越えて重んぜずば。
もし汝人を赦さざる時間を六十秒の
時の過ぐる間に満し得ば、
汝のものぞ此の地と此の地の中にある凡てのものとは、
而してーーー更に優れることはーーー實に(げに)汝は人なるべし!
ラディヤード・キプリング(1865-1936)
日本語訳「キップリング詩集」(1936、岩波書店、中村為治選訳)より