平山栄一記録簿  想哲理越憂愁     

人生の様々な側面を表示します メール keitaisan@icloud.com 

②ノーマスク社会では当たり前だったこと・・・

すっかりマスク社会になってしまってから全く出来なくなってしまったことがある。公園などで子供たちや子供連れの親子と出会ったときに、気軽に話しかける、ということが出来なくなった。挨拶すら殆どしない。マスク越しに挨拶を交わすという感覚にはなれないものだ。

 

今日、全くの偶然で久しぶりの体験ができた。小さな男の子二人(三歳五歳くらい?)と若いお母さんの三人連れだったが、三人ともマスクをしていない!  滅多にないことなので、ちょっとした試みをしてみた。

 

三人とも、公園の片隅にあるヤギ小屋でヤギを見ていた。私は公園で少し稽古をしていたのだが、この三人連れがノーマスクだったので、思い切って少し話しかけてみることにした。

 

ゆっくり近づいていく。先方もノーマスク、私もノーマスク、何かしら意志が通じる感覚を共有していたようにも思う。しかし、マスクのことについてはお互いに何にも触れなかった。私もヤギの近くに近づきながら・・・

 

「このヤギたちってクワの葉が大好きなんですよね。」

 

「あ、そうなんですか。」と母親が答える。私が話しかけたことで少し緊張感が取れたようだ。

 

「ええ、随分以前にも子供たちと一緒に来たことがあるもので。」(実際、児童デイのたくさんの子供たちを連れて何度か遊びにきたことがあった)

 

「たぶん、この木だったかな。」

 

そう言いながら、上の方にしか残っていない葉っぱを2,3枚ちぎって、ヤギの口元に持っていくと、あっという間に口の中に入れて食べてしまった。

 

「やっぱりこれがクワの葉ですね。」

 

「へー、そうなんですか。」お母さんは落ち着いた様子で言葉を返してくれた。

 

子供二人はびっくりして興味深そうに見ている。私は、子供たちに向かって言ってみた。

 

「葉をちぎってあげてみる? ヤギさん食べてくれるよ。」

 

「でも、ボク、手が届かない・・・」

 

「うん、そうだね、上の方にしか葉っぱないからね。取ってあげるよ。」

 

私は、何枚かクワの葉をちぎり取り、二人に渡す。お兄ちゃんの方が早速手に持ってヤギの口元に持っていった。ヤギはもう必死で口元を子供の手に近づけるので、驚いてお兄ちゃんは手を引っ込める。何度かトライして、とうとう食べてもらうことに成功。大きな笑みを浮かべながらとても喜んでいた。

 

弟の方はまだまだビクビクでうまくいかない。私が、

 

「ちょっと大きな葉っぱを探そうね。」そう言いながら、大きめの葉を何枚かちぎる。弟に渡し、何度かチャレンジするが、やっぱり怖くてできない。

 

「大丈夫だよ、端っこだけ持ってヤギが口でくわえたらすぐに離せばいいよ。」

 

「うん」

 

何度か何度かトライして、やっと弟もできた。もう満面の笑み。それから何度かトライし、成功率が上がっていった。

 

二人とも十分楽しめたようなので、

 

「よかったね、じゃあね、またね。」

 

そう言って、私はその場を離れていったのだが、お母さんが二人の子供に、

 

「ちゃんと御礼を言いなさいよ。あ、どうもありがとうございました。二人ともとても喜んじゃって・・・」

 

「いえいえ、じゃあ、これで」

 

子供たちは二人で何度も、

 

「ありがとう。」

 

「ありがとう。」

 

と言ってくれた。

 

本当に久しぶりにほっとするようなヒトトキを味わうことができた。もしこの三人連れがマスクをしていたら、おそらく私が近寄った時点で逃げてしまっただろう。親は自分と子供二人をノーマスクの危険人物から守らないといけないから・・・ 危険なのは親の方、子供たちにマスクを着けさせることこそ危険なのに・・・おそらく、今回のノーマスク三人連れは、お母さん自身がマスクのウソを知っており、私も同様だと感じたのだと思う。

 

近づいてきた私を見て、少し立ち止まって様子を見よう、ということだったのでは? そして私がヤギのえさの話をすることで安心され、子供とのやりとりを見守ってくれたのでは?

 

こうしたやりとりは、マスク社会でなかったころ、本当に普通にできていたことだ。私は子供が好きなので、ついつい話しかける。そして普通に家族のように遊んでしまう。子供は敏感なもので、相手が遊んでくれる、おもちゃになってくれる、というのを見抜くと、本当に親しく遊んでくれるものだ。今回はその久しぶりの体験をさせてもらった。

 

本当にほっとするような瞬間だったが、ごくごく稀なものになってしまった。もっともっとこういう日々を取り戻していきたい。そのためには大人がマスクを外さなければ・・・

 

まぁアッケラカーンとしながらボチボチ知らしめていくしかないな。でも、マスクをしている家族連れに声をかけるって・・・やっぱり出来ない。第一、ノーマスクの私のことを危険人物だとしか思わない。この点は当面変わらないだろう。まだまだ道は遠いが、まぁ諦めないでおこう。